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騙された投資家--エンロン粉飾決算事件

  • 執筆者の写真: 高下 豊光
    高下 豊光
  • 2021年9月7日
  • 読了時間: 3分

エンロンとはアメリカ合衆国テキサス州ヒューストンにあった会社でエネルギー事業やデリバティブ取引で急速に成長した大企業だ。 もともとは1931年に発足したエネルギー会社に端を発していた。1980年代終わり頃からデリバティブ取引の開始と、当時のレーガン政権によるエネルギー産業の規制緩和が追い風となり、2001年のフォーブス誌によれば売上高全米7位、世界16位の超巨大多国籍企業へと成長していく。

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同社はエネルギー事業と投資事業の2つで利益を得ていたが、帳簿をつける際に連結決算から外れる特定目的会社(SPE)を利用した利益の水増し計上や簿外債務の隠蔽が発覚し、2001年に160億円の負債を抱えて破綻した。 この影響で同社に関わる事業体や多くの投資形が多大な損失を被ることになった。


大手監査法人アーサー・アンダーセンが関与していたことから米国企業全体に不正会計疑惑が広がる。 大手監査法人が会計を担当していることから財務の健全性を疑わなかった証券アナリストたちには、不正発覚直後もエンロン株に対して強い「買い推奨」をするものも有ったという。


ただし、その後粉飾決算が次々発覚するとダウ平均などの米国株価指数も急速に下落していくのだ。 エンロン事件が重大な事件と言われるのは、事業の主体と独立しているべき監査法人も主体となり積極的に不正に及んでいたと、それが信頼の厚い大手監査法人のアーサー・アンダーセンであったことによる。この監査法人は、事件当時60年の歴史がある米国有数の監査法人の一つである。

エンロン社の急成長に加えて、老舗監査法人のアーサー・アンダーセンが会計管理を担当だったため、エンロン社の決算状況を疑うものはいなかった。 しかし事件発覚後、エンロンのみでなく、このアーサー・アンダーセンが会計管理を担当する会社から次々と不正が発覚し、これが米国企業全体への不正会計の疑念につながっていくのだ。

そして、エンロン事件以降、粉飾決算が相次いで発覚していく。 2002年1月23日には小売業のKマートが連邦破産法第11章適用を申請。その2日後の25日には同社従業員から会計処理に関する内部告発がSECに提出されている。 同年1月28日には海底ケーブル通信のグローバルクロッシングで、回線容量販売に関する架空取引を会計処理に反映していた疑いがあり、連邦破産法第11章適用の申請を行った。


さらに同年3月26日にも大手廃棄物処理会社のウェイスト・マネジメントが92年〜97年にかけて税引前利益を合計17億ドル水増し、SECから起訴されことになる。

米国株式市場に多大な影響を与えたエンロン事件はそれまでの企業の決算管理のずさんさが浮き彫りになった一連の騒動であった。 この騒動直後から同様の自体を防ぐための法律や委員会などが設立され、米国内に限らず日本国内でもその監視体制が厳しくなるのだ。 また透明性の高い会計や各種情報開示が求められるようになる大きなきっかけとなった大事件であった。

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