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最も美しい散文「夏の花」の誘惑

  • 執筆者の写真: 高下 豊光
    高下 豊光
  • 2021年9月28日
  • 読了時間: 2分

あなたは、読んだことがありますか。最も美しい"散文"と評価されています。


私は街に出て花を買ふと、妻の墓を訪れようと思つた。ポケットには仏壇からとり出した線香が一束あつた。


八月十五日は妻にとつて初盆にあたるのだが、それまでこのふるさとの街が無事かどうかは疑はしかつた。

恰度、休電日ではあつたが、朝から花をもつて街を歩いてゐる男は、私のほかに見あたらなかつた。


その花は何といふ名称なのか知らないが、黄色の小瓣の可憐な野趣を帯び、いかにも夏の花らしかつた。


炎天に曝されてゐる墓石に水を打ち、その花を二つに分けて左右の花たてに差すと、墓のおもてが何となく清々しくなつたやうで、私はしばらく花と石に視入つた。この墓の下には妻ばかりか、父母の骨も納まつてゐるのだつた。

持つて来た線香にマツチをつけ、黙礼を済ますと私はかたはらの井戸で水を呑んだ。

それから、饒津公園の方を廻つて家に戻つたのであるが、その日も、その翌日も、

私のポケツトは線香の匂がしみこんでゐた。

原子爆弾に襲はれたのは、その翌々日のことであつた。


なお、作品の途中にカタカナで表記された詩がある。

この詩がなんとも云えないほどもの哀しい。


作者「原民喜」は、1951年鉄道に身を横たえて自殺した。

何かに行き詰まった時には、"被爆小説"を読んでみることをおススメする。

今の自分の悩みなど、悩みのうちに入らない、と心底思うはずだ。。

「原民喜」には、「心願の国」という名編がある。合わせて読んで欲しい。


コロナウイルスによる巣ごもり暮らしには、ぜひぜひ読書を。


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