経営破綻した「安愚楽(あぐら)牧場」
- 高下 豊光

- 2021年9月9日
- 読了時間: 4分
約73,000人から約4200億円もの資金を集めた和牛オーナー制度が行き詰まり、虚偽の説明で出資者を勧誘したとして、元社長らは特定商品預託法違反の罪で実刑判決を受けた。

戻ってくるはずの資金が消えた出資者らの怒りは収まらない。実在の牛の数が契約数より不足する状態だったのに見逃したとして、牧場を指導・監督する立場だった国の責任を問う国家賠償訴訟も大阪など各地で起こされている。
豊田商事事件を上回る史上最大の消費者被害事件である。
国の対応放置が被害拡大の一因になったとして、関西の出資者ら142人が総額約4億3千万円の国家賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こしている。「みんなバカだと思うかもしれないが、私たちは『口蹄(こうてい)疫で指摘を受けているが、国も応援してくれている。畜産を日本からなくしてはならない』という元社長の言葉を信じたんです」という。
平成7年以降、総額約7200万円を出資したという兵庫県内の女性は、元社長の三ケ尻久美子被告=特定商品預託法違反罪で1審有罪、控訴中=が涙ながらに訴えた様子を振り返った。
安愚楽牧場が宮崎県内で経営していた複数の農場では口蹄疫が相次いで発生。計約15,000頭の牛が殺処分された。さらに、農場の一つで口蹄疫の兆候があったのに通報していなかったとして、宮崎県から文書で改善指導された。パーティーはこの直後に開かれた。
もちろん「国が応援」という元社長の言葉は方便に過ぎなかった。「元社長が大好きだった。経営陣みんなを信じていたんです」という女性。パーティーの約3カ月後、安愚楽牧場から出資者全員に経営破綻したことが通知されたが、女性は牧場の復活を信じてエールを送ったという。なんて愚かしいのか。
訴状などによると、安愚楽牧場のビジネスモデルは、出資者が牧場所有のメスの繁殖牛を購入してオーナーとなり、年1回産む子牛を買い取る名目で毎年3~8%を配当。契約終了時には繁殖牛を購入時と同額で買い戻すという仕組みだった。
しかし、経営破綻して以降、ベールに包まれてきた実態が次々に明らかになる。消費者庁の調べでは、平成19年3月時点で繁殖牛の契約頭数は92,023頭だったが、実際にいた牛は51,428頭。破綻直前の平成23年3月時点では契約が97,986頭に対し、実際にいたのは65,572頭だった。
さらに、オス牛やメスでも繁殖能力のない子牛を繁殖牛と偽って販売。トレーサビリティー法に基づく「個体識別番号」とは別に、独自の耳番号表示をして架空の繁殖牛を販売していた。既存の出資者に対する配当などは、新たな出資者への販売代金を充てていた。まさにポンジスキームで、破綻するのは必至の状況だった。
「私の耳番号の牛はどこにもいなかった。これが詐欺でなくて何なのか」会見の間、女性の怒りが収まることはなかった。だが、気の毒には思うのだが、騙される方が悪い。
そもそも、出資した人たちは、この畜産業をどこまで知っていたのだろう。伝染病のリスクも、国の政策変更や為替変動のリスクもまるで考えてはいないのだ。ただ配当だけ計算して悦に入っていた。欲の皮が突っ張った愚かしい強欲亡者だと思う。
人の努力の上に安愚楽をかいていても、手持ちのお金が増えるはずがないだろうに。だから安愚楽牧場というのか。
訴状や弁護団によると、実在しない金塊を販売して預かる「現物まがい商法」を展開した豊田商事事件(昭和60年)を機に特定商品預託法が成立。牛は同法の規制対象でなかったが、実在の牛が契約数より不足する悪質な和牛預託商法が平成9年、相次いで刑事事件化したことを受け、規制対象に「飼養牛」が追加された。
この後、十数社あった和牛預託商法業者は次々に破綻した。
安愚楽牧場も当時から牛が不足していたが、発覚することなく事業を継続。所管の農林水産省平成19年12月、安愚楽牧場とともに最後まで事業を続けていた「ふるさと牧場」(東京都)に立ち入り調査し、1年間の業務停止処分とした。
だが、安愚楽牧場の調査は平成21年1月まで遅れた。しかも、直営牧場牛の頭数が契約数より約9千頭も少ないことを把握したにもかかわらず、元役員による「データ処理上の単純ミス」などという説明をあっさり受け入れてしまった。
安愚楽牧場をめぐる国賠訴訟はすでに5月末、宇都宮、東京、名古屋で集団提訴されている。元役員らを相手取った損害賠償訴訟も各地で起きている。また、特定商品預託法違反の罪に問われた三ケ尻被告らは、より罰則の重い詐欺罪については不起訴になっている。三ケ尻被告らが詐欺罪でも立件されるべきだとして、各弁護団が検察審査会に申し立てた結果、一部では「不起訴不当」の議決も出るなどしている。
戦後最大の消費者被害事件の終着点はまだ見えない。大阪弁護団長の斎藤英樹弁護士は言う。「国がきちんと調査するチャンスは何度もあった。そこで業務停止処分にしていたら、ここまで被害が拡大することはなかったはずだ。
収入格差が広がりを見せる中、国民の金融リテラシーの低下は如何ともしがたい。安愚楽をかいてお金を増やせるなどあってはいけないことである。

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