無能政府日本は自然死を迎えるのか

わが国の少子高齢化は、かつて人類が経験したことのない速度で急激に進行している。

その深刻さは日本人の誰ひとりとして分かっていないのだと思うぐらいだ。

政府では、議論はあるけれど対策がないという始末である。

最大のネックは財源である。少子化問題は、1兆円や2兆円では対策も立てようがないのだ。

安倍前首相は、歯止めがかからない少子化について「国難」であるという認識を示した。

そうであるなら、10兆円、20兆円の国家予算をねん出しなければならないと思う。

世界には、少子化対策に成功した稀有な例がある。それはフランスだ。

フランスでは、19世紀末から20世紀まで長期間にわたって少子化問題に苦しんできた。1993年1994年にかけて出生率は1.65にまで落ち込んでいたのである。

ところが、その後1990年代後半から順調に回復傾向を示し、出生率2.0に達したのである。この動向については日本でも注目されている。従来、フランスでは手厚い家族政策が充実しており、日本においては見習うべき政府の施策が山のように存在した。

だが、日本では予算規模の概略ができるにとどまってしまった。安倍前首相は「国難」とまで発言したが何一つ行われなかった。

いまでも各自治体が「街角お見合いイベント」を主宰しているが、実効性はあまり上がっていないようだ。何もしないよりはまだマシだが、それ以上でも以下でもない。お寒い限りである。

では、当のフランスの少子化対策をざっと見ておきたい。

フランスの社会制度は、際立って「産めば産むほど有利なシステム」になっている。

1.家族手当 所得制限なしで、2子以上を養育する家庭に給付される。20歳になるまで、こどもの数によって支給される。 日本の児童手当と近いのだが、１子の家庭には支給されない点が違っている。

2.N分N乗方式 子育て世代、特に3人以上の子どもを育てている世帯に対して、大幅な所得税減税がなされている。

3.家族補足手当 第3子から支給される。所得制限はあるが、制限は緩やかであり多くの世帯が受給している。

4.年金加算 子どもを3人養育すると年金が10％加算される。

5.職業自由選択補足手当 子育ての為に仕事を全面的に休むのか、週4日や3日勤務、午後3時までというように時間短縮するかなど、個人に合わせて労働の有無や、労働時間数を選択することができる。

6.保育方法自由選択補足手当 保育ママに子どもを預ける場合に支給される。

7.出産費用 産科の受診料、検診費、出生前診断、出産費用など妊娠出産から産後のリハビリテーションを含め無料。

8.父親の出産休暇 母と同様の有給扱いで賃金の80％が保障されている。

9.不妊治療と人工中絶 治療は公費で行われているが、43歳までという年齢制限が設けられている。

10.高校までの学費は原則無料。 公立大学の学費も、数万程度の登録手続き費と健康保険料のみで、ほぼ無料。 また、多くの学生が奨学金を支給されている。 わが国のように、学費や教育費にお金がかかるから子どもを産まないという若年夫婦は、ほとんど存在しない。

11.事実婚と婚外子 フランスでは、ユニオンリーブル（自由縁組み）というカップルの生き方が一般化している。 法律婚にとらわれないカップルが社会的に認知されるようになった背景には、フランス人の家族観とそれに伴う法の整備があげられる。

1970年に6％だった婚外子が、1980年代半ばから急速に増加し、2008年52％に達している。 現状では、産まれるこどもの半分が婚外子となり、社会的な受容度は高くなっている。 婚外子の法律についても、自然子（非嫡出子）の権利は嫡出子と同じになり、嫡出子、自然子という用語そのものが民法から削除されている。日本では、これら民法の改正には残念ながら100年を要するだろう。

12.保育サービス 公立保育所の充足率は低いのだが、3歳までは自宅で子どもをみてくれる認定保育ママや低額のベビーシッターが比較的簡単に利用できる。この点でも日本は立ち遅れている。

また、3歳以上になると公立の保育学校に入学できるようになり、保育学校は初等教育体系に位置づけられているため100％就学保障されている。

まだ、他にも有効な施策はあるのだが、割愛しよう。 いったいに日本政府には国民を守ろうとする意欲はあまりないのだろうか。

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