森永卓郎に年収格差の憂鬱な現実を学ぶ
- 高下 豊光
- 2021年9月15日
- 読了時間: 5分
刊行されたのは、2003年3月である。著者は経済評論家の森永卓郎である。
本書が刊行されたのは、小泉--竹中売国奴コンビの暗黒時代であった。

コンビの経済悪化政策のおかげで中級から下層に沈んだ一般国民は貧苦に喘ぐようになった。
その後遺症に国民は2020年の今も苦しんでいる。
(1)小泉内閣は、景気を回復させようとはしていない、のではないか。いまのように、デフレを止めずに不良債権処理を進めれば、倒産や失業が増えていく一方だ。デフレはインフレより、はるかに怖い。 (2)デフレを止めようとしない小泉=竹中チームの政策には、なんらかの意図が隠されているのかもしれない。小泉「構造改革」の正体は、「金持ちをますます金持ちにする」ことにあるのではないか。 (3)そうだとすれば、そのプログラムは次のようになっている。まずITバブルを起こし、株高で利益をえて、成りあがるための「頭金」をつくる。これが90年代後半の状況。 (4)金融引き締めによるデフレを仕かけて資産価値を急落させ、借金で不動産を購入した企業を追い込む。破綻した企業は、ハゲタカファンドや「勝ち組」企業に安く買いたたかれる。新生銀行の例でわかるように、これは実際に起こったことだ。 (5)不良債権処理を強行して、放出された不動産を二束三文で買い占める。これが、いままさに起ころうとしている事態。 (6)デフレを終わらせて、キャピタルゲインを得る。安く買いたたいた土地の値段が上がれば、ハゲタカたちは莫大な利益をえる。2003年末から2004年春には、このような状況がくるだろう。 (7)一度たたき落とした旧来型の企業や一般市民が這いあがってこないように、弱肉強食社会へと転換する。医療費、保険料などの自己負担増。酒税、たばこ税などの増税。「勝ち組」企業が恩恵をこうむる減税。企業では雇用の契約社員・パート化、賃金体系の成果主義への転換が進む。 (8)その結果、想像を絶する所得格差が生じ、新たな階級社会が生まれる。年に1億円以上かせぐ1%の大金持ちと、年収300~400万円程度の一般サラリーマンと、年収100万円程度のパート労働者・フリーターとの三層構造の社会ができる。エリートと非エリートの所得格差は100倍以上になる(アメリカは1000倍、いまの日本は数倍程度)。 (9)年収300~400万円というのは世界的に見て標準的な労働者・サラリーマンの所得だから、いま平均700~800万円もらっている日本のサラリーマンは、大幅な減収と身分の不安定にさらされる。サラリーマンの9割は「負け組」に転落する。 一言でいえば、世界に稀な平等を実現した戦後の日本社会を、アメリカ型の社会につくりかえるというシナリオだ。いま、僕らは日本社会が行きづまっていることを身にしみて感じているから、グローバル・スタンダードとか市場原理といった言葉に、それなりの説得力を感じざるをえない。でもその実態は、こんな露骨な弱肉強食の社会なのだ、と森永はいう。 もっとも著者が言いたいのは、僕たちを待ち受けているのが絶望的な社会なのだということではない。今後、この国がアメリカ型の社会に向かうことは避けられない。でも、そうであるならば、これまで僕たちがとらわれてきた「豊かさ」の発想を引っくりかえしてみればいいじゃないか、と言うのだ。 (10)景気が回復しても、企業は以前のようには正社員を採用しない。能力主義、成果主義とは、特定のエリートだけが取り分を増やすということだ。だから「勝ち組」になろうとする幻想など捨てよう。 (11)第三世界では、1人当たりのGDPが1000ドルを超えると飢餓状態から脱出できると言われる。年収100万円は、その10倍に当たる。生活苦で自殺するような事態ではない。 (12)年収300~400万円は世界標準で、貧乏なんかじゃない。実際、いま年収300~400万の家庭で、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジはほぼ完備されており、8割がエアコンを、7割が車をもっている。これのどこが貧乏なんだ。 (13)それより、年間総労働時間が1942時間ということのほうが問題だ。これはアメリカとイギリスの中間に当たるが、日本人はドイツやフランスに比べると年間300~400時間も余計に働いている。 (14)お金はほどほどでいいから、もっとゆったり暮らしたいとは思わないか。人生を犠牲にして働くという発想を変えれば、いまの日本では「貧乏」でも、けっこうハッピーな生活が送れるのだ。生活のリストラは必要だが、カローラを軽自動車に乗りかえる程度ですむ。中国製の服を着て、アジアの野菜を食べ、オーストラリアの牛肉を食べていれば、生活費はそんなにかからない。 (15)豪邸に住んだり、高級車を乗りまわしたり、高級料亭で食事したりするより、気の置けない仲間とわいわい騒ぎながら安酒を飲んで安い食事をするほうが、ずっと楽しいんじゃないか。つまり日本人は、ラテン化すればいいのだ。 もちろん、もっと精密な議論がされているけれど、骨組だけを抜き出せば、こんなことになる。それぞれの論点に、賛否さまざまな議論はあるだろう。
竹中平蔵氏は、派遣労働を全業種に開放してしまい、非正規労働者が夥しいまでに増加した。非正規雇用者は40%を超え、いまや正社員は高嶺の花になってしまった。
そのおかげで派遣会社のパソナグループは大企業に生まれ変わり、竹中平蔵氏は三顧の礼を持って会長に迎えられている。世渡りの達人である。日本中が唖然としたのは記憶に新しい。
終身雇用制という日本経済を支えてきた社会の在り方を潰した金融担当大臣として、また少子化をなし崩し的に推し進めた悪魔の政治家として、竹中平蔵氏は後世にまで語り継がれることだろう。

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