東郷ビール伝説の底知れぬ憂鬱
- 高下 豊光

- 2021年9月10日
- 読了時間: 3分
日本海海戦では,指揮官としてすぐれた力を発揮し,勝利へ導いた。そのため東郷の名は,フィンランドで,ネルソンらとともに著名な提督の名をつけたビールの商品名になり,現在も売られている。

そして「東郷ビール」というキャプションのビール瓶の写真。う~む、まだあったのか「東郷ビール」伝説。 この東郷ビール伝説というのは、フィンランドに実際にはない「トーゴービール」なる銘柄がいかにもあるかのように、そしてそれが東郷への敬意だとか親日の証だとしてどんどん尾ひれがついて広まった話のことだ。 この経緯と真相については、簡単にいえば、「アミラーリ」(「提督」という意味)という商品名のビールが各国提督の肖像画をラベルにしていて、その1人が東郷平八郎だったというだけの都市伝説にすぎないものだ。 このビールは70年に生産開始、90年代初めに一旦製造中止となり近年復活したが、現在はネルソンの肖像だけになった。
だから東郷のラベルのビールが現在も売られているというのも正しくないのであった。 提督ビールがスタートした当時は東郷はラベルセットに入っていなかったし、ラベルになった23人の中には、日露戦争で東郷の対戦相手だったロシアのマカロフやロジェストベンスキーも入っている。
これだけでも東郷を記念するビールなどではないのは明らかだ。たまたま東郷のラベルのついた瓶だけ見れば、これが変わりラベルだなんて思う人はいないだろうから、「日本の提督がフィンランドのビールのラベルになったんだ!」と思っても、これはしかたがない。 ところがこの"東郷ビール伝説"は広く流布していて根が深い。罪作りな話である。 ビール瓶のラベルを教室で見せて伝説に沿ったストーリーを教える社会科授業の様子を記したWebページもあったし、「フィンランドは親日」という話になると引き合いに出されるのが常で、著名なジャーナリストや政治家でも「東郷を讃えるビール」などと平気で書き、さらには「東郷はフィンランドの英雄」とか「フィンランドの歴史の教科書に出ていてフィンランドの子供はみんな知っているのになぜ日本の歴史では教えないのか」なんて意見もある。
実際は、日露戦争についてはフィンランドの歴史の教科書に短く出ているけれども東郷の名はない。一般のフィンランド人は日露戦争といっても「聞いたことはあるかも」程度で、当然東郷の名など知らない人が多い。 一方、話がややこしくなるのは、同じデザインの「東郷ビール」は現在日本でも売られていて、それはオランダ産のプライベートビールに日本の会社が東郷のラベルをつけて売っているからだ。これについてくる説明書きが、どうやらまさに東郷ビール伝説を真実のように書いているらしい。私は実際に見たことはないので確実なことは言えないが、ネット上にあるその説明書きの引用などからするとおそらくそうなのだろう。 さらに悪いことには、どうやら真相を知っていながら、それでも子供たちをミスリードしようとする大人がいることだ。 何年か前のある大手新聞の社説でも、真相を知っているわれわれには、字面上間違いとは指摘しにくい。 何も知らない人が読めば、おそらく東郷ビール伝説と同じ印象、つまり「フィンランドでは東郷平八郎が尊敬されていて記念ビールまである」と思うだろう。 なんだ、一杯食わされた。頭から信じてしまっていた。だから麻布の某居酒屋で「東郷ビール」を見つけたときは小躍りして喜んだ。なんと、恥ずかしい。

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