戦後の日本を活写、映画「飢餓海峡」
- 高下 豊光
- 2021年10月8日
- 読了時間: 3分
人間の宿業を感じさせる重厚なドラマ
---戦後の日本社会を切り取る「飢餓海峡」の憂鬱

1964年製作/日本 原題:A Fugitive from the Past 配給:東映
監督:内田吐夢
主演:三國連太郎
「作品のストーリー」
昭和22年9月20日台風10号が猛威を振るった日に、北海道岩内で質店一家3人が惨殺され、犯人は放火して姿を消した。
その直後嵐となった海で、青函連絡船転覆の惨事が起き、船客530名の命が奪われた。
遺体の収容にあたった函館警察の刑事弓坂は、引取り手のない二つの遺体に疑惑を感じた。
船客名簿にもないこの二遺体は、どこか別の場所から流れて来たものと思えた。
そして岩内警察からの事件の報告は、弓坂に確信をもたせたのだ。
事件の三日前に朝日温泉に出かけた質屋の主人は、この日網走を出所した強盗犯沼田八郎と木島忠吉、札幌の犬飼多吉と名のる大男と同宿していた。
質屋の主人が、自宅に七八万円の金を保管していたことも判明した。
弓坂は、犬飼多吉の住所を歩いたが該当者は見あたらず、沼田、木島の複製写真が出来るまで死体の照合は出来なかった。
だが弓坂は漁師から面白い話を聞いた。消防団と名のる大男が、連絡船の死体をひきあげるため、船を借りていったというのだ。
弓坂は、直ちに犬飼が渡ったと見られる青森県下北半島に行き、そこで船を焼いた痕跡を発見した。
犬飼が上陸したことはまちがいない。
その頃、杉戸八重は貧しい家庭を支えるために芸者になっていたが、一夜を共にした犬飼は、八重に3万4千円の金を手渡し去った。
八重はその恩人への感謝に、自分の切ってやった爪を肌身につけて持っていた。
そんな時、八重の前に犬飼の件で弓坂が現われたが、八重は犬飼をかばって何も話さなかった。八重は借金を返済すると東京へ発った。
一方写真鑑定の結果死体は沼田、木島であり二人は、事件後逃亡中、金の奪い合いから犬飼に殺害されたと推定された。
その犬飼を知っているのは八重だけだ。弓坂の労もむなしく終戦直後の混乱で女は発見出来なかった。
それから10年、八重は舞鶴で心中死体となって発見された。しかしこれは偽装殺人とみなされた。
東舞鶴警察の味村刑事は、女の懐中から舞鶴の澱紛工場主樽見京一郎が、刑余更生事業資金に3千万寄贈したという新聞の切り抜きを発見した。
八重の父に会った味村は、10年前八重が弓坂の追求を受けたと聞き、北海道に飛んだ。
樽見が犬飼であるという確証は、彼が刑余者更生に寄附したことだ。
弓坂と味村は舞鶴に帰ると、樽見を責めた。
しらをきる樽見の罪は、八重が純愛の記念に残した犬飼の爪と、3万4千円を包んだ、岩内事件の古新聞から崩れていったのだ。。
「飢餓海峡」は、貧困ゆえに運命に翻弄される人々の罪と罰を描くことによって、日本の底辺の戦後史を刻んだ傑作だ。
これも純愛物語である。しかも人間の宿業を感じさせる重厚なドラマだ。
加えて刑事もののサスペンスでもある。そして骨太の社会劇だ。
「砂の器」と並び、戦後の飢餓にあえいだ日本を追体験させてくれる。
見逃した人には激しくおススメ。

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