八尾市闇金心中事件の憂鬱
- 高下 豊光

- 2021年9月7日
- 読了時間: 2分
2003年6月14日、大阪府八尾市在住の主婦(当時69歳)は、夫である清掃作業員(当時61歳)と自身の兄(当時81歳)と共に、電車へ投身自殺するという痛ましい事件が起こりました。

その日の午後、ご夫婦の知人である男性(当時78歳)のところに遺書が届いたことで、その主婦がヤミ金からの取り立てを苦に心中したことが明らかになったのだ。
その主婦は同年5月中旬に、「ヤミ金業者から1万5000円を借り、すでに15万円以上支払ったにも関わらず完済できない」と、八尾署に相談していたにも関わらず、民事不介入が原則の警察が仲介などするはずもなく、ヤミ金業者に支払う義務はないことを伝え、帰宅させていた。
この主婦は過去に自己破産をしており、金策に行き詰ったことから、同年4月8日に090金融をしていたヤミ金業者に問い合わせ、口車に乗せられて3万円を借り入れたが、口座には1万5000円しか振り込まれていない。
振込の直後から、主婦の自宅はもちろん、そのアルバイト先や友人宅、近隣住民の自宅にも連日電話がかかるようになる。
脅迫的な取り立てが行われるだけでなく利子も法外で、指定された口座に15万3000円を振り込んでも、利子だけで毎週1万5000円の支払いを余儀なくされ、主婦の保証人とされた兄も一緒に自殺するほど、追い詰められていったのだ。思い出してほしい。現実には、借入金は1万5千円にすぎないのだ。
ヤミ金が原因で起こった事件の中でも、最悪とされるこの事件がきっかけで、「ヤミ金融対策法」が制定・施行され、無登録あるいは違法金利で貸金業を行った者は、懲役5年から10年以下に刑事罰が引き上げられる。
金融業者としての登録条件の厳格化に加え、無登録者の広告・勧誘の禁止や、貸付・取り立てにあたって不当な手段をとることの禁止、夜間だけでなく日中の執拗な取り立てへの規制、借り手の自殺で下りる生命保険金での弁済の禁止、年利109.5%(閏年は109.8%)を超える契約は利息分が無効になるなど、罰則が強化されたのは事実であった。
その一方で、消費者金融では多重債務を減らす名目で総量規制が設けられ、貸し手が減ったことでヤミ金融に手を出さざるをえない状況に追い込まれる消費者に対する、根本的な対策が議論されているわけではなかった。自己責任という無機質な言葉が、中に舞った。
日本人の金融リテラシーの低さが論議されるのは20年後まで待つ必要があった。

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