人格変容の希望は死刑台への直行便
- 高下 豊光
- 2021年12月17日
- 読了時間: 2分
彼らの強制的な「人格変容」は、相当研究されているようで、たぶん、逃れられる入会希望者はほとんどいなかっただろうと思える。

つまり、一旦コンテナに閉じ込められたら最後、もう犯罪者になる以外の
選択肢はなかったのだ。
だから、理系秀才がなぜ?という問いかけは空しく響く。
オウムの"マインドコントロール"は、「自爆テロ」を率先して行うイスラムの過激派と寸分違わない。
彼らは、テロを「聖戦」と云い、「自爆すれば死後はあの世に招かれ、好きなだけ美女を抱けるよ」と、教え込まれる。本部へ行くと、照明もないコンテナに入るように女性信者に諭されるのだ。
そして、入室するまえに合成麻薬を飲むように云われる。

コンテナが表から施錠される。すると大音量で麻原彰晃の説法が始まる。
3Dスクリーンには、地獄絵図の放映だ。もう完全に地獄の住人となるのだ。
麻原の声が云う。「私に帰依しなさい。私だけが、無間地獄からあなたを救いだせる」と。
合成麻薬の影響が現われる。心身が変容していくのが分かる。
幻覚が浮かび上がる。麻原の声に、本当に救われるような気になるのだ。
いったん変性意識に浸かってしまうと、時間をかけて「薬抜き」をしなければ治らない。
オウムの門をたたくような人は、どんな人だったのだろうか。
編集長の私にはそれを十分に説明できる。
知的水準が平均以上、自己改革の願望が強い。むしろ自分以外の別の存在になりたいとさえ思っている。
なんとかして現状を変えたいのだ。だから勉強熱心。しかも負けず嫌いと来ている。常識を外れた読書家だ。
本屋にいけば、自己啓発・新宗教コーナーへ真っ先に足を運ぶ。そして、ヨガもやってみる。
麻原彰晃の空中浮揚の写真をみて感動する。例えば、先日死刑に処された「井上嘉浩」だ。
そんな知的な真面目過ぎる若者たちが「国家転覆」を画策し、実行したのだ。
しかも実行犯たちは、それを「聖戦」と考えていたのだ。死刑台に上がり、彼らの胸に去来したものは、何だったのだろうか。
編集長の私は、以前東京に住んでいた。そのとき、モスクワからのラジオ番組を偶然聴いた。
それは、オウム真理教のラジオ番組であった。
麻原彰晃が説法していた。今思うと、なかなかに説得力があった。
私は、オウムの信者になりたいとは寸分思わなかった。だが、著書はよく読んだ。
あの時、入会しなくて本当によかった、と思う。
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