バブル経済と共に舞い上がった女帝
- 高下 豊光
- 2021年11月15日
- 読了時間: 2分
興銀を手玉に「根拠のない熱狂」
---バブルの女帝「尾上縫」の衝撃

バブルが生んだ美人女将、それが尾上縫である。
総額2兆7千億円。
1989年から91年までに、たった一人の料亭女将が作った借金総額である。
尾上縫は、大阪ミナミの千日前で料亭「恵川」を経営するかたわら、1日に数百億円の株式投資を繰り返していた女相場師だ。
彼女の犯罪は、バブル期を象徴するような、その特徴が顕著に現れた事件であった。
逮捕後に、尾上縫は一躍時の人となり、テレビドラマのモデルにもなった。
彼女は、「恵川」の隣に「大黒や」という比較的庶民的な大衆店を経営していた。事件は、この「大黒や」で巻き起こるのだ。
「大黒や」の中庭には、不動明王や弘法大師の石像・灯籠などが並んでいた。とくに中央には、ガマガエルがにらみを利かせていた。
尾上縫は、毎日このガマガエルを拝み、そして株の相場を張ったという。
今から考えると、まるでお笑い芸人のネタのようでもある。それほど彼女の奇怪な行動は常軌を超えていた。
やがて、北浜の証券マンのあいだで女将の予言が当たると評判になった。そして、証券マンたちが、「大黒や」に日参するようになる。
そして尾上縫を囲む証券マンのサークルが生まれる。決まって日曜日の夕刻に「尾上縫の会」が開かれていく。
証券マンは「大黒や」で証券の事務作業まで行うようになる。こうして、「バブルの女帝」が祭り上げられるのだ。
彼らは「大黒や」で推奨銘柄を仕込み、自社に戻ってお客にその株を奨めていく。
推奨された銘柄は、面白いように上がる。ここでも根拠のない熱狂が渦巻いていくのだ。
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