ジャスティン・サッコ炎上事件
- 高下 豊光
- 2021年11月4日
- 読了時間: 4分
---「ネットリンチ」の底知れない恐怖
恐ろしいその新しい言葉とは、「ネットリンチ」である。

このネットリンチという状態になると“攻撃”の火の手は燃え盛る一方となる。 全世界を敵に回し、人生のすべてが壊れてしまう事態にもなりかねない。
この言葉、ジョン・ロンソンというイギリスの有名ルポライターが書いたノンフィクション、『ルポ ネットリンチで人生を壊された人たち』(光文社新書)という本で、一躍有名になった。
ツイッターごときで人生が壊されるとは、一体なにが起こっているというのか。
この本に紹介されている、「世界最大のツイッター炎上事件」を紹介する。
先日、誹謗中傷によって自殺に追いやられたアイドル・レスラーの問題は、国会でも審議される予定だ。
ところで、このネットリンチ事件の主人公は、芸能人でもなんでもない。ごく普通のアメリカ人、30歳手前の白人女性にすぎない。
彼女は、某インターネット関連企業に勤務していた。その名を、「ジャスティン・サッコ」という。
「史上最大のネット炎上事件」は、2013年、12月20日に起こる。彼女は、有給休暇をとっていた。そして、ヨーロッパを経由してアフリカに向かう一人旅を満喫していた。
やがて、ヨーロッパ旅行を終えた彼女は、ロンドンのヒースロー空港で、アフリカ行きの乗継便を待っていた。
その搭乗時間が迫っている。彼女は、離陸直前、こんなツイートをしたそうだ。
「アフリカに向かう。エイズにならないことを願う。冗談です。言ってみただけ。なるわけない。私は白人だから」
ジャスティン・サッコとしては、ほんのジョークのつもりだった。もちろん悪気などなかった。
それは、エイズに罹患するかどうかという問題と、人種や国の違いはまったく関係のない話だ。
彼女の発言は、「白人だからエイズになるわけない」などという考え方は、不適切だの、非常識だのという以前の問題である。
ジョークにしたところで、著しく配慮に欠けた言説というほかはない。よく知らないことには口出ししない、というのは最低限のマナーだ。
その後、彼女はアフリカ行きの飛行機に乗り込む。旅の疲れもあって、ジャスティン・サッコは、ほとんど眠っていた。
ようやく飛行機が、アフリカ・ケープタウン国際空港への着陸態勢に入る。彼女は、寝ぼけマナコをこすりながら、携帯の電源を入れる。
すると昔の女友だちからの奇妙なメッセージが、目に飛び込んできた。
「こんなことになるなんて、とても悲しいよ」そのメールは、何のことかさっぱりわからない。さらに、ハンナという名前の親友からは、こんなメッセージが届く。
「すぐに電話して!」 「今、あなたは、ツイッターで、全世界のトレンド第1位になっているのよ!
「ジャスティン・サッコのツイート。人種差別があまりにひどすぎて、恐ろしい!」
ツイッター画面に切り替えてみた。すると、「言葉も出ないね。恐怖以上の何かを感じるよ…」 「ジャスティン・サッコという、このとんでもない女のことを、皆に知らせるべきだ!」
「本当はもう家に帰りたいんだけど、いまいるバーでみんながジャスティン・サッコに夢中になっているもんだから、帰るに帰れないわ!」
「破滅に一直線に向かっているのに、本人は飛行機に乗っていて気づいてない」
さらに…なんと、彼女が務めている会社の社長も、こんなツイートを行なっていた。
「(ジャスティン・サッコのツイートは)あまりに非常識で、言語道断なコメントという他ありません。確かに彼女は弊社の社員ですが、現在、国際線の飛行機に乗っており、連絡がつかないのです」と。
そして、恐ろしいことには---世界の何者かによって、飛行機の行き先をリアルタイムで追跡できるサイトへのリンクが貼られたのだ。
要するに、彼女の乗っている飛行機が今どこにいるかを、世界中がリアルタイムで確認できるようになったという驚愕の展開をみせる。
なんと、芸能人の出待ちならぬ出迎えの野次馬が空港に群がったそうだ。
「おお! ジャスティン・サッコが、ついにケープタウン国際空港に到着したぞ。変装のつもりか、サングラスをかけている!」
ジャスティン・サッコは、真っ青になりながら、即座に問題のツイートを削除した。
「深く考えずに発信する」ことが、ある種のストレス発散になってしまっているのだ。SNSに問題発言などを無邪気に投稿する人、それを正義という名のもとに必要以上に叩く人がいる。
ネット社会の到来、怖い時代だ。
作家・筒井康隆の短編集に、「ある日、突然テレビがオレの生活を中継するようになった」という驚愕のショート・ストーリーがある。
ヘンな時代になったものだ。思えば、約半世紀も前に、筒井康隆はこの日を予見していたのか。
木村花さんへの誹謗中傷は、まだ世間では燻っているようだ。このおバカな連中は、この番組には演出があり、花さんは悪役を要求されていたかもしれないと、想像さえできなかった。バカな連中だ。
木村花さんの所属事務所では提訴も辞さないとコメントしていた。

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