「寝かせる」とは伝統の継承
- 高下 豊光
- 2021年9月26日
- 読了時間: 3分
泡盛の大きな魅力は、年月をかけて熟成させれば素晴らしい古酒に育っていくことだ。
沖縄では、甕やビンに入れて熟成させることを「寝かせる」とよく表現する。
寝かせば寝かすほど香りも甘くなり、口に含んだときの舌触りもまろやかになる。

その風味の芳醇さは、1853年に琉球国を訪れたペリー一行が、「まるでフランスのリキュール(ブランデー)のようだ」と表現したように、現代でも、世界的に評価されている年代物のウイスキーやブランデーと肩を並べることができるほどの名酒なのである。
では、泡盛はどれくらい熟成させれば古酒といえるのだろう。
以前の規定では、3年以上熟成させた泡盛が、全量の50%を超えていれば「古酒」と表記してよいことになっていたが、平成25年10月10日に「泡盛の表示に関する公正競争規約」の一部改正を行い、平成27年8月1日より、琉球泡盛の「古酒」表示について、全量が泡盛を3年以上貯蔵したものに限って「古酒」表示されることになった。
また、古酒年数をしっかり表記した泡盛の場合は、当該年数以上、貯蔵したものとなる。 具体例をあげると、5年、7年など、はっきりと年数が表記された泡盛古酒は、その全量が表示された年数以上熟成されたものではなくてはならないと規定されている。
5年古酒でしたら、その全量が5年熟成させた泡盛か、あるいは5年古酒にそれ以上の年数寝かせた古酒をブレンドしたものでなくてはならない。ブレンドした場合、常に貯蔵した年数が若い泡盛の方の年数を表示しなくてはならない。例えば、20年古酒に少量でも3年古酒がブレンドされていれば、そのお酒は「3年」としか表記してはいけないという。
一般酒に10%以上の古酒をブレンドする場合、「混和酒」あるいは「ブレンド酒」と表記できるが、この場合も、「古酒○%」と混合割合を表記しなくてはいけない。
古酒を選ぶときには、古酒年数が高ければ、それだけ素晴らしい泡盛古酒である可能性が高くなる。
その風味は酒造所によって、またはブレンドによっても違ってくる。
琉球王朝時代から約600年の歴史を持つ泡盛。戦前までは100年、200年といった古酒が数多く存在し、名家の家宝として賓客に振る舞われていた。 沖縄では、100年を超える古酒が、各家庭で育てられていた。
残念ながら、この歴史的な古酒文化は、先の大戦で途切れてしまう。だが、沖縄県民は再び100年古酒を育てようとする。100年以上の古酒は、ただ寝かせて(熟成させて)いればできるというものではない。泡盛がどんなにアルコール度数が高く、古酒になる成分をたくさん含んでいたとしても、ただそのまま置いておくだけではとても100年、200年は持たず、やがて酢になり水に戻ってしまうのだ。
それを防ぎながら、なおかつ熟成を重ねて100年以上の古酒を育てるため技術が、琉球王朝時代から沖縄には伝わっていたのだ。それが「仕次ぎ」という技術である。
具体的にいうと、年代物の古酒にそれよりは少し若い古酒を注ぎ足すことで、古酒の熟成した香りや芳醇さを保ちながら、酒を劣化させないようにする手法だ。 名家では年代物の泡盛古酒の甕を古い順に1番から5番、6番まで用意したという。一番甕から最上の古酒を汲み取ったら、その減った分をそれより若い二番甕から注ぎ足し、二番甕には3番甕からと、どんどん循環させる。
こうすることで古酒の香りを損なうことなく、逆に深めながら、酒の質も落とさないように工夫していたのだ。
「仕次ぎ」をどれくらいの頻度や量で行うかによって、古酒の育ち方は大きく変わる。
そのため、各家には決まりがあったという。こうして、子や孫へと我が家の酒が継承されていく。

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