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魔女先生は、このとき変身できなかった--

魔女先生「菊容子」は、なぜ殺されたか。

殺人で逮捕され、刑務所に7年間服役していたのは、交際中の俳優(あくまで自称だが)だった。

彼は、年下の売れない俳優である。ほとんど無収入の”格差恋愛”だった。


役者としてはまったくダメ男くんであった。柔道が強いだけの体格だけは立派で、彼女の父親に結婚させて欲しいと挨拶に出向いてもまったく言葉にもできなかったらしい。

”ウドの大木”に過ぎなかった彼を「菊容子」の母性本能は、どうしても放っておけなかったのだ。


事件が起きたその前夜、彼女は、仲間の飲み会に参加して、あげく雑魚寝をして帰宅しなかった。

彼は、菊容子のマンションに30分おきに何度も電話している。次第に苛立った彼は、ほとんど眠れなかった。もう精神的に追い込まれていたようだ。しかも『オレの他に男がいるのでは?』という疑心が膨らんだ。

その翌日、『彼女をとっちめてやろう』意を決して彼女に会いに行く。


ところが、逆に『あんたこそ何よ!ヒモのくせして!』と、なじられてしまう。キレてしまった彼は、そばにあった電気コードで彼女を絞殺した。それは、昭和50年4月29日であった。

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魔女先生は、昭和46年10月から翌年3月まで放送された子供向け人気番組だった。

菊容子演じる美人先生は、宇宙から地球に派遣された「宇宙平和監視員」である。

先生は、怪獣と闘うために「アンドロ仮面」に変身する。

子供たちは、この場面がくると跳びあがって喜んだ。

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菊容子は、あの世へと旅立った。享年24、早すぎる人生を終えた。

法廷証言で、犯人を激昂させた魔女先生の言葉がある。

それは『もっと大人と恋をすればよかった』

それこそ彼女の将来を奪った最後のセリフであった--

 
 
 

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