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記録映画「ダ―ウインの悪夢」の衝撃


ヴィクトリア湖畔。

巨大な魚を運ぶ人や水揚げする漁師たちで活気にあふれている。

この巨大魚こそが、半世紀ほど前に湖に放たれたナイルパーチだ。


肉食の魚・ナイルパーチは湖に元々いた魚たちを餌にして、たいへんな勢いで増えた。

そして、淡白な白身で加工もしやすく、海外への輸出にぴったりだったナイルパーチは大金になる魚になった。皆がナイルパーチ漁にむらがり、加工・輸出の一大魚産業が誕生した。魚加工工場のオーナーに言わせれば、ナイルパーチは救世主だ。

ナイルパーチで仕事をしているのは、漁師や加工工場の人間ばかりではない。

最大の輸出先であるEUの国々に魚を空輸するパイロットもそうだ。彼らは旧ソ連地域からやってくる。

1回につき55トンもの魚を飛行機の腹に詰めて、タンザニアとヨーロッパを頻繁に往復する。そして、彼らパイロットを相手に町の女・エリザたちは売春で金をかせぐ。


農村などからもお金を得ようと多くの人がやってきた。彼らは湖畔に漁業キャンプをつくった。漁に出てナイルパーチを獲り、工場に売って金を稼ぐために。だがボートのない彼らは、誰もが漁に出られるわけではない。工場の仕事にありつくのも難しい。彼らの中に次第に貧困がはびこり始める。

同時にキャンプの男たちを目当てに売春をする女たちも増えた。

そこからエイズが広がり、病気で働けなくなる者も多い。

漁業キャンプの牧師によれば、毎月10?15人が死ぬと言う。それでも牧師は「教会はコンドームを勧められない」。

キャンプのリーダーは、「貧困が悪循環している。強い者だけが生き残る、弱肉強食なんだ」と言う。


 町にはストリートチルドレンが目につく。

画家のジョナサンも、かつては路上で生活していた青年だ。

エイズで親をなくしたり、貧困やアル中で子どもを育てられない親たちに放り出されたり、路上で生活せざるを得ない子どもたち。

暴力や空腹を忘れるため、粗悪なドラッグを嗅いで眠りにつく夜もある。

ドラッグはナイルパーチの梱包材などを溶かしてつくる。

 “住民参加型漁業をめざす国際ワークショップ”で、ヴィクトリア湖の自然が壊滅的状況にあることが報告される。ナイルパーチによって湖の生態系が崩れ、やがてはナイルパーチさえいなくなる危険もあるのだ。


一方、魚加工工場で不思議なトラックを見かけた。

それはナイルパーチを加工した後の残り物を集めに来たトラックだった。

ナイルパーチの切り身は多くの地元民には高くて手が出せない。切り身を輸出した後の残りの頭や骨などを1ヶ所に集め、揚げたり焼いたりして売っている。それを地元民は食べる。残骸の山からはアンモニアガスが噴き出し、そのせいで眼球が落ちてしまった女性もいる。

在タンザニア欧州委員会の代表は、EUがこの国の魚加工産業のインフラを整えたのだと胸を張った。


ジョナサンが興味深い話をおしえてくれた。

ヨーロッパからナイルパーチを運ぶためにやってきた飛行機から大量の武器が見つかった。タンザニア政府はそれを知らなかったが、行き先はアンゴラだった。ジョナサンはその話を新聞やテレビで知ったと言う。

漁業研究所の夜警?ラファエルが読んでいる新聞には、タンザニアの保安長官が飛行機による武器密売に関与し起訴された、との記事が。その記事を執筆したジャーナリストのリチャードは、魚を運ぶためにやってくる飛行機にはアフリカの紛争で使われる武器が積んであると言う。

果たしてそれは真実なのだろうか?

ラファエルが呟く。「戦争があれば金になるのに---皆、戦争を望んでるはずさ」。

魚を積んだ飛行機は、今日もヨーロッパや日本へやってくる。その魚は私たちの食卓へやってくるのだ---

先日、平和な日本で、燕市の教育長が、戦争待望発言をおこなって辞任に追い込まれている。

発言しないだけで、心で思っている日本人は、本当は多いのかもしれない。

 
 
 

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