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男が決意する時、魅惑の歌声「新垣勉」の場合

ご存じだろうか、全盲のテノール歌手「新垣勉」を。

そして、大いなる彼の苦闘を。


彼は、1952年沖縄生まれ。

生後まもなく事故に遭い、失明した。


さらに、両親は離婚。

米国海兵隊員だった父親は帰国する。

しかも、すぐに母親にも捨てられ、母方の祖母が幼い彼を引き取って育ててくれたのである。

彼は、祖母を実の母親だと思っていた。

やがて、出生の秘密や失明してしまった事故の真相を知る日がやってきた。

新垣少年は、自分を捨てた両親を激しく憎悪する。

米国へ父親を捜しに行って、刺し違えたいとさえ思った。

もう生きていくのがイヤになってしまった。

高校時代、彼は井戸に飛び込んで死ぬ決意をする。

だが、たまたま通りがかかった人に止められ、自殺できなかった。

そして、苦悩する新垣勉を救ったのが、

ラジオから聞こえてきた「讃美歌」であった。

たちまち魅せられて教会へ足を運ぶようになった。


そこで一人の牧師と知り合いになる。

牧師は新垣勉の境遇に同情し、自宅に招いたり、誕生日を祝ってくれたのだ。

新垣は大学の神学部に進学した。

牧師はたいそう喜んでくれた。

「讃美歌」に魅せられ、在学中「聖歌隊」に入って活動した。

もう人生に悲観する新垣勉はいなかった。

そう彼のこころには「革命」が起きていた。

武蔵野音楽大学を卒業、声楽家になると決意した。

あれほど憎んでいた父親を、今ではすっかり赦していた。

むしろ感謝さえしている。

それは、世界的なヴォイストレーナーの言葉。

曰く、「あなたのラテン的な声は、もう少し磨けば素晴らしいものになる。神様と父親からの

最高のプレゼントに違いない」と絶賛されたのであった。

 
 
 

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