映画「カポーティ」カンザス州で一家が惨殺
- 高下 豊光
- 2020年12月23日
- 読了時間: 3分
実在した天才作家「カポーティ」に焦点を当てた映画。

2005年製作/114分/アメリカ 原題:Capote 配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
作家のトルーマン・カポーティを描いたもので、彼が代表作『冷血』を取材し書き上げるまでを中心に描いた伝記映画でもある。
2005年度アカデミー賞で作品賞、監督賞、主演女優賞、助演女優賞、脚色賞の5部門にノミネートされ、カポーティ本人に生き写しの演技を披露したフィリップ・シーモア・ホフマンが主演男優賞を受賞したドラマだ。
「ストーリー「」
1959年、カンザス州の小さな町で、一家4人が惨殺されるという事件が起こった。「ニューヨーク・タイムズ」紙でこの事件を知り興味を持ったカポーティは、幼馴染で『アラバマ物語』(映画の中ではディルという名前でカポーティが出てくる)の女性作家ハーパー・リーと共に現場に向かう。これはカポーティが同性愛者であることが分からないようにするためのカムフラージュという。
事件をノンフィクション小説の題材にしようとした彼は、取材を進める中で、自分と同様に子供時代に家族に見捨てられた死刑囚と友情が芽生え始める。死刑執行により事件が完了し、小説を早く完成させたい自分と、死刑囚を「友」として助けたい自分の間でカポーティの気持ちが大きく揺れ動き、精神的に疲弊していく。
この小説の後にカポーティが作品を書けなくなった心理的な経緯を赤裸々に描くストーリーとなっている。
トルーマン・カポーティがどんな人物で、作家であるかー。この映画は「冷血」の執筆背景に焦点を絞ってその複雑な人物像を描いていく。
カポーティをザックリと補足しておきたい。カポーティは、幼少期に両親が離婚し親戚を転々としながら成長する。独学で小説を学び10代後半でデビューしている。若き天才作家としてたちまち注目を集めたのだ。
オードリー・ヘップバーン主演で映画化された『ティファニーで朝食を』などのヒット作を生み出し、華やかな交友関係やゴシップで社交界のアイドル的存在になった。また、同性愛者であることも公言している。映画のなかでも社交界でハイテンションに振舞うカポーティが描かれている。
そして、新しいジャンルとして取り組んだのがノンフィクション小説の「冷血」である。
取材に訪れたカンザス州では、同性愛者であることを隠すために友人の女流作家ハーパー・リーを同行している。
このハーパー・リーは、後に人種差別を描いた小説「アラバマ物語」(こちらも映画化されている)を発表した作家です。「アラバマ物語」に登場するディルはカポーティがモデルと言われている。
死刑囚との友情と作品の話題性の葛藤に苦しむカポーティ。話術には長けているけれど心が見えない「冷血」さを併せ持つカポーティ。それを繊細に演じたホフマンがホントに見事だ。
立ち姿(しかも後ろ姿)だけで同性愛者であることを表現するシーンはかなりの衝撃でもある。
カポーティの晩年は、酒と薬に溺れ1984年に59歳で死去する。 本作でカポーティを演じたフィリップ・シーモア・ホフマンもまた、多くのヒット作に出演していたが2014年薬物の過剰摂取で46歳で死去した。
心理ドラマの秀作を堪能して欲しい。見逃した人に激しくおススメ。
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