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悪女列伝・尼崎連続変死事件の憂鬱

2012年12月12日、兵庫県警本部の留置施設内で、ひとりの女が自殺した。

女の名は角田美代子。尼崎連続変死事件の主犯である。


美代子と同居する集団、いわゆる“角田ファミリー"が逮捕され、これまでの非道な犯行が次々と明らかになってきていた矢先のことだった。


主犯の自殺によって記憶の彼方に葬り去られようとしているこの事件の裏側には何があるのか? 尼崎を中心とした徹底取材をもとに、驚愕の真相を白日の下に曝す。


この事件の主犯格とされる角田美代子は、少なくとも25年以上もの間、兵庫県尼崎市南東部で、血縁関係にない人物を多く集め、疑似家族を築きながら共同生活を営んでいた。


そして、角田美代子の周辺では、1987年頃に当時、角田美代子と同居していた女性(A家母)が失踪したことを発端に、複数の不審死や失踪事件が相次いで発生していたが、長年にわたり、事件が表に出ることはなかった。


しかし、2011年11月に角田美代子に監禁されていた40代女性(F家長女)が監禁状態から抜け出し警察に駆け込んだことで、角田美代子がF家長女に対する傷害容疑で逮捕され、次いで、その女性の母親(F家母)の死亡事件が発覚する。


さらに、この事件を端緒に捜査は進められ、2012年10月に別件(C家長男・C家母年金窃盗事件)で逮捕されていた従犯者が全面自供したことにより、ようやく一連の事件が明るみに出ることになった。


ところが、角田美代子は、事件について多くを語らないまま、2012年12月12日に兵庫県警本部の留置所で自殺し、事件の真相解明は極めて困難な状況になってしまう。


従犯者の供述をもとに、事件の捜査を続けてきた兵庫、香川、沖縄の各県警による合同捜査本部は、2014年3月に解散し、捜査は事実上終結しており、確認された8名の死亡者のうち6名について、殺人や傷害致死の罪などで、角田美代子やその親族など11名が起訴され裁判前に自殺した彼女を除き、10名に裁判員裁判が開かれた。


また、現在も角田美代子の周辺で3名の行方が判明しておらず、1名は角田美代子によって死亡したとされるが遺体が発見されておらず、他2名については彼女から逃れているため後に行方不明となっており公開手配されている。


数ある大量殺人事件の中でも逮捕、書類送検者の数が17名と多く、その中には被害者の子や姉妹といった親族も含まれていることが、この事件の大きな特徴の一つである。


また、死亡事件以外に特筆すべき事柄として、些細な弱みにつけこんで威圧的に家族を支配する、いわば家族乗っ取り事件を角田美代子が複数回起こしていたことも明らかになった。

そこでは、多くの人々が、親族間同士での暴力を強要されたり、飲食や睡眠を制限されるなど虐待され、さらには、財産を奪われたり、家庭崩壊に追い込まれるといった被害を受けていたことも判明している。

まったく、ホラー小説も出番がないほどの事件であったが、角田美代子が自殺した今となっては、すべてが闇に葬られた。



 
 
 

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