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ユングが発見したシンクロニシティ

シンクロニシティは「共時性」とも訳され、複数の出来事が非因果的に意味的関連を呈して同時に起きる(共起する)ことである。シンクロニシティの正確な理解は難しい。


何故なら、「出来事」「因果」「意味」「同時」とは何かについて、議論が必要だからである。言い換えれば、解釈の余地が残されている理論である。


出来事というのは、単純な物理現象ではない。祖母が粘土から作って大切にしていた花瓶(歴史性)が突然奇妙な音とともに割れ(状況性)、居合わせた人々が不吉に思った(体験)というような事柄全体が、1つの出来事となる。


シンクロニシティである場合には、そうした「花瓶が割れた」という出来事と、「病院で祖母が亡くなった」という出来事との間に、通常の因果関係がない(一方が他方の原因になっていたり、共通の原因から両者が派生していたりしない)必要がある。


因果から考えると、同時に起きたのは全くの偶然であり、両者は1日違っていても1週間違っても構わない。因果関係がない代わりに、それらの出来事は共起することに、意味があるのだ。花瓶というのは祖母の象徴であり、割れることは形を失うことである。意味的関連が両者の出来事を橋渡ししている。

 

シンクロニシティは、それが起きることで「意味」を生成していると捉えることができる。ユングは、シンクロニシティに現われる意味は、もっぱら元型(アーキタイプ)であると主張した。


ここで、歴史的事実を紹介する。飛行機の発明である。

1903年、ライト兄弟が人類初の有人飛行に成功する。ところが、時をほとんど同じくして

日本人が飛行メカニズムを発見し、すでに実験飛行に成功していたのだ。

彼の名前は「二宮忠八」という。1891年には、日本初のプロペラ飛行実験を成功させている。彼が、実験のために資金調達に駆け回っているときに、ライト兄弟に先を越されてしまうのだ。


飛行機のメカニズムは、お互いよく似ていた。必要な動力の計算も、まるでよく似ていたそうだ。だが、両者が連絡を取り合い、情報交換をしていた事実はない。なにしろ明治時代である。まったくの偶然、シンクロニシティである。

 
 
 

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