top of page

からのゆりかご---大英帝国の罪と罰

この作品は、「からのゆりかご」という告発ドキュメントを原作として映画化された。


1986年のイギリスのノッティンガム。社会福祉士のマーガレットは、ある晩、シャーロットという女性から自分のルーツを調べてほしいと相談を受けた。

オーストラリアからはるばる訪ねてきたというシャーロットは少女時代、ノッティンガムの児童養護施設にいたが、ある日、他の児童たちとともにオーストラリアに移送された。養子縁組ではないその移送に疑問を抱いたマーガレットが調査したところ、シャーロットと同じ扱いをうけた人々がオーストラリアにたくさんいることを知り、夫マーヴや上司の理解と協力の下、彼らの家族を探すことにする。

しかし、彼女の活動は児童移民に深く関わっていた慈善団体や教会の立場を悪くするものであったことから、彼女は言われなき中傷や脅迫を受けることとなる。更に、被害者の悲惨な体験を聞き続け、彼らの気持ちに寄り添い過ぎたために、心的外傷後ストレス障害に陥ってしまう。それでも、マーガレットは夫に支えられ、そして彼女に救われた被害者たちの励ましを受け、粘り強く活動を続けて行く。

大英帝国の裏面史を暴いた驚愕の事実が明らかにされるのだ。児童移民とは、養護施設の子供たちを長い間イギリス連邦の旧植民地に移住させた事業。作中におけるオーストラリアでは収容施設での重労働、暴力、性的虐待がはびこったが、教会により長く隠されてきた。


児童移民の数は13万人を上回ると推計され、2009年11月にオーストラリア首相が、2010年2月にイギリス首相が事実を認め、正式に謝罪をしている。マーガレット・ハンフリーズは原作の印税をもとに基金を設立し、現在も児童移民だった人々の家族を探す活動を続けている。

養護施設の子供たちは、親に捨てられ、国からも捨てられてたのだ。しかも、子供たちは甘い言葉に騙され船に乗せられた。その言葉は、映画のタイトルになった言葉である。太陽が輝き、食べきれないほどのオレンジがある楽園で暮らすのだ。

英国政府が、19世紀から1970年まで、養護施設の子どもたちをひそかにオーストラリアやニュージーランドへ労働力として送っていた「児童移民」という名の強制移民政策という表に出せない黒歴史。その事実を暴いた実在の女性で英国のソーシャルワーカー、マーガレット・ハンフリーズを描く感動的なドラマである。

さまざまな事情で施設に預けられた、主に7~10歳の子どもたちは、親に無断で遠い異国に送られ、過酷な労働を強いられ虐待にも遭うのだ。苦しい人生を生き抜いて、今は大人になった人たちが発する、「私はいったい誰なの?」「一度でいいから親に会いたい」という声に涙腺崩壊間違いなしだ。

 
 
 

Comments


bottom of page