鞆の浦・御舟宿いろは
- とよっチ
- 2020年8月31日
- 読了時間: 2分
この建物は、いろは丸事件で坂本龍馬が談判した歴史の舞台にも登場する由緒ある町家だったという。鞆の空き家をなくそうと働きかけていたオーナーが、 取り壊されそうになっていることを聞き、この町家を再生しようと思い立ったのが宿としての出発点だ。鞆の町並みの歴史的な価値はすでに広く知られているが、実際に皆にこの町並みや町家を楽しんでもらうにはどのように活用したら良いのだろうと思案し、レストラン兼宿として「御舟宿いろは」は、2008年にオープンし今に至っている。

また、再生する過程の中でアニメーション作家の宮崎駿氏との出会いもエピソードの一つで、監督がデッサンしたものを生かして復元されている。感謝の気持ちを込めてレストランにそのデッサンが飾られている。復元された客室は、蔵の中にあり梁を生かした部屋、二間続きや6畳の小さな懐かしい和室があり、それぞれ表情が違っている。戸、ふすまや障子など日本の古来からの職人芸術が垣間見られる。調度品や飾りにもこまやかな気配りが見られ、建物は使うことで命を吹き込まれると感じられる。
そんな町家でいただく料理は、意外にも和洋折衷の創作料理。味付け、盛りつけや皿の選び方など若い料理人の感性で楽しませてくれる。食事場所の座敷は、前述の談判した間で歴史の重みと料理の斬新さの不思議な調和がある。
最大でもわずか三組のもてなしで、オーナーやスタッフとの接点がある、顔が見える宿である。 館内に時計がないことにしばらくして気づいた。「サービスがないことがサービス」と冗談めかして言うオーナーの言葉に自信と誠意を感じられた。ここでの宿泊は、昔から日本にある様式の美しさに触れて何かを感じてもらえればとの思いが伝わってくる滞在時間だった。
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