わが国初の犯人狙撃・映画「凶弾」の憂鬱な清々しさ
- とよっチ
- 2020年9月10日
- 読了時間: 2分
"あっぱれ"わが国初の犯人狙撃
---石原良純デビュー映画「凶弾」の憂鬱な清々しさ

この映画は完全なミスキャストだった。
「瀬戸内シージャック事件」こそ時代を反映した凶悪犯罪だったが、映画化には無理があったのだろう。
よど号ハイジャック事件の2か月後だったせいか、事件発生当初は「また、過激派か!」と世間が騒然となりメディアが大きく報じた。
だが犯人は政治目的の過激派ではなく、20才そこそこの単なる街のゴロツキに過ぎなかった。

彼は、威勢よくライフル銃を手にし、乗客乗員を人質に小型旅客船を乗っ取ったが、警察の狙撃手によってあっけなく射殺された。 その模様はTVで全国の茶の間に流され、よど号事件で権威を失墜させた警察が名誉挽回に見せしめとしての、いわば【公開射殺】という形でケリを付けたのだ。
このシージャック事件は、よど号事件の直後でなければ、あるいはただの不良ではなく過激派組織の犯行であれば犯人が"公開射殺"される事はなかっただろう。 その射殺された犯人役が、「石原良純」だ。 社会の不条理に反抗する少年院上がりの反骨少年として映画では描かれている。
1982年の公開当時、『落ちこぼれ』、『校内暴力』と言った言葉がクローズアップされ、荒れる若者、反抗する若者といった風潮があった。 そんな時代ニーズに合わせて、この映画は作られた。
題材と話題性は十分だったが、話題性だけで選んでしまった主役のせいで薄っぺらな映画になってしまった。 初めて見た石原良純は、反骨少年というより、"とんこつ少年"にしか見えなかったし、芸達者なベテラン俳優陣に囲まれ、ド素人な演技が気の毒なほど浮いて痛々しいほどだ。
これぞ最高のB級映画と云える。
「オレ映画なんかやりたくないのによぉ~」とでも思ったのか、石原良純は終始口を尖らせ怒りまくっていた。
その姿は、迫真の演技? いや、むしろ本音だったのかも知れない。
石原裕次郎のファンならどうぞ。留めはしません。
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